20分での面接ということ

ロジャーズの3条件は、セラピー(カウンセリング)だけに限定されないこと、技法ではなく態度であることをブログに書いてきました。そして、検定試験ということを考えると、ロジャーズばかりで試験に臨むのも考えものです。ロジャーズの条件は、「人格変化」について述べていますが回数については書かれていません。数か月あるいは場合によっては数年かかるかもわからないのです。試験とは言え20分でクローズすることは難しいのではないでしょうか。

※技能検定2級は「60分のうちの最初の20分」「最初からクローズまでの20分」の2つの考え方がありますが、私は後者で考えています。クローズまでと考えないと評価区分の具体的展開力が記載されていることの説明がつかないからです。国家資格キャリアコンサルタント試験とは別物だと考えています。

そこで、全く別の考えをしてみましょう。キャリアカウンセリング(概ねキャリアコンサルティングとここでは考える)の著作のあるハー(Herr,E,L)とクレイマー(Cramer,S)によるカウンセリングの定義です(キャリアカウンセリングの定義ではないので念のため)。2名によるカウンセリングの定義は少し長い引用ですが次のようなものです。ハー博士は渡辺三枝子先生との共著で「キャリアカウンセリング入門」という本も出版されています。

「カウンセリングとは、心理学的な専門的援助過程である。そしてそれは大部分が言語を通して行われる過程であり、その過程の中でカウンセリングの専門家であるカウンセラーと、何らかの問題を解決すべく援助を求めているクライエントとがダイナミックに相互作用し、カウンセラーはさまざまの援助行動を通して、自分の行動に責任をもつクライエントが自己理解を深め、『よい(積極的・建設的)』意思決定という形で行動がとれるようになるのを援助する。そしてこの援助過程を通して、クライエントが自分の成りうる人間に向かって成長し、成りうる人間になること、つまり社会の中でその人なりに最高に機能できる自発的で独立した人として自分の人生を歩むようになることを究極的目標とする」(渡辺三枝子「カウンセリング心理学」P8)

ロジャーズのカウンセリングの定義はまだ見出していないのでわかりませんが、人格変化よりも上の定義は、より行動にも重点が置かれているように読めます。また、重きがあるのは「自分の人生を歩む」ことで、いわゆるWell-beingという考え方がそこにあるように思われます。ここがカウンセリング心理学と臨床心理学との違いだと私は理解しています。また、同書P137では「実行の段階」とあり、単に人格変化にとどまらず、現実行動に結びついています。この差は大きいと考えていいでしょう。

検定試験、ということで考えるならば、単に「気づき」ということだけでは弱く(気づきは、概ね人格変化に対応していると推測しています。評価区分の具体的展開力はさらに他の変化にも言及しているため、気づきだけでは合格ラインには届かないのではないでしょうか)、実際の行動に移すことができるような支援方策までを行うことが合格ラインとして求められていると思います。もう少し考えると「~をしてみませんか?」「はい、やってみます」でも60点はいくかも知れませんが、「では実際に今、練習で~をしてみましょう」ということを試験官に対して示せるレベルが望ましいと私は考えています。

これは傍証にすぎませんが、少し古い資料ですが「キャリア・コンサルティングの効果的普及のあり方に関する研究会」報告書、平成15年3月、中央職業能力開発協会というのがあり、インターネット上でPDFで読むことができます。ここでキャリアコンサルタントの養成講座・能力評価試験についてレポートがあります。注目すべきはこの研究会の委員で木村周(座長)・國分康孝・桐村晋次・横山哲夫などといった名前があります。また、作業部会分科会の座長は國分康孝でメンバーには木村周・石崎一記などの名前があります。完全に憶測なのですが、この技能検定は國分康孝先生のカウンセリング心理学の強い影響にあり、臨床心理学とは一線を画しているように思えます。そうすると、コーヒーカップモデルに準拠する必要はないのですが、折衷的・行動に移ることができることは求められるのではないでしょうか。國分康孝・木村周・渡辺三枝子先生という流れにそった試験のように思えます。(木村周先生の筑波大学における後任が渡辺三枝子先生)このように考えると、カウンセリング心理学のベースを学習することは検定試験にとどまらず、よりキャリアコンサルタントの自己研鑽に繋がるような気が私はしています。つまり、実際の行動レベルの変化が求められるので、可能ならばクローズで行動への意欲は示せるようにならないと厳しい感じがしています。

実際に20分間で行動変容まで面接を進めるのはかなり難易度は高いと思いますが、少なくともそのような意識をもって練習に臨みたいものです。(文中敬称略)