フランク・パーソンズ(Parsons,Frank 1854-1908)は、特性・因子論の代表的な人物である。1854年アメリカのニュージャージー州マウント・ホーリーに生まれた。コーネル大学土木科を卒業し鉄道会社に就職するが、倒産したため法律を勉強しボストンで弁護士の資格を得る。1908年(つまり死去の年)に、ボストン市民厚生館に世界最初の職業機関である職業局(vocational bureau)を開設した。著作として『職業の選択』(Choosing a Vocation)を著し死後の1909年に出版された。初めて職業指導とカウンセリングを導入した人物である。この本の中で初めて「職業指導カウンセラー(VocationalCounselor)」という言葉が使われた。

当時のアメリカは、産業革命により仕事環境や都市部への人口流入により、貧富の差が拡大していた時代である。例えば1903年にヘンリー・フォードがフォード・モーター社を設立した。1908年にはいわゆるT型フォードが発売され、爆発的な売れ行きをしめした時である。

「特性・因子論」(いわゆるマッチング理論)とは後世の呼称であるが、職業指導に決定的な影響を与えた。その見解としては3点に集約され、このステップを踏むことが賢明な職業選択と考えられた。

①自分自身・自己の適正・能力・興味・希望・資質・限界、その他の諸特性を明確に理解すること。

②職業や仕事に関して、その仕事に求められる資質、成功の条件、有利な点と不利な点、報酬、就職の機会、将来性などについての知識を得ること。

③上の2点の関係について、合理的な推論を行いマッチングをすること。

批判としては、

①ネジがぴったりと合うかのような関係を重視しすぎている(ペグの理論、と呼ばれる)。

②人と職業との関係を固定的・静的に捉え過ぎている。ダイナミズムや発達的な視点がない。

③現実の職業選択は、必ずしも合理的な推論で行われているとは限らず、情緒的・無意識的な非合理的要素によって左右されることもある。

などである。

パーソンズは後世に重大な影響を与え、一般職業適性検査、職務分析、職業分類、職業情報など、現在のキャリアガイダンスで使用されている手法はこの理論から生み出されたものである。一般に、職業指導運動の始祖とされている。パーソンズの職業局は学校に指導者を派遣して学校カウンセラーに実践指導した。また1913年には全米職業指導協会(NVGA)が結成された。これが今日の全米キャリア開発協会(NCDA)である。また、GATB(General Aptitude Test Battery)一般職業適正検査は、アメリカ労働省が1937年から10年間をかけて完成させたものであり、1952年に日本の労働省(現在の厚生労働省)がアメリカ政府の許可を得て日本の実情に合うように翻訳し開発された。

ミネソタ大学で進路指導をしていたウィリアムソンは、パーソンズの理論に基づく心理検査の結果は、学生生活全体の適応状況を改善するためのカウンセリングにも有効であるとし、「特性・因子論的カウンセリング」を提唱した。なお、平木典子氏はウィリアムソンの元に留学し薫陶を受けている。また、ウィリアムソンの理論は広い意味での指示的療法であり、ロジャーズがウィリアムソンの前で彼自身を批判する講演を行ったエピソードも有名である。

余談ながら、vocationとoccupationはどちらも「職業」という日本語になるが、英語の文脈での使い方はoccupationのほうが広く使われ、単なる仕事というくらいの意味である。

vocationは「神が与えた天職」という意味の他に、仕事に必要なトレーニングや資格を所持する場合に使われる。

無資格であるが実態的にキャリアコンサルティングをしている場合にはoccupation、国家資格キャリアコンサルタントや技能検定に合格し登録した場合にはvocation、ということになる。